「床」という文字は、飾り床として「とこ」と読まれたり、「ゆか」と読まれたりまぎらわしい。しかし、このまぎらわしさが、私達祖先の住まいに対する考えを示している。
文献によると床というのは中国語の「寝台」を意味する言葉からきたようで「とこ」と呼ばれていた。持ち運びの出来る「とこ」は便利な面もあるが、固定した方が都合のいいこともある。昔の貴族屋敷には、移動式の「とこ」は「台床」と呼ばれていた。
「とこ」は「止処」、「住まい止まる」という意味から出発し住まいの中でも大切な起居の場であった。しかし、このような「とこ」も、その昔は、極く限られた一部の貴族の住まいにのみであって、庶民は土間の一隅に藁を敷いて生活していた。土間より一段高い「とこ」に起居する貴族達と、土間に藁を敷いて生活する庶民の姿は、そのまま支配者と被支配者を象徴する姿であった。
起居の場が、その階級によって高低があったことは、世界中であったことで、「高さ」はいつの世でも権力者が被支配者に示す威力の表現であった。このような「とこ」が天平の時代を過ぎてくると、都市化の影響から支配者である貴族は住まいの中に「土間」が必要なくなり、「総床」とする方法があらわれた。すなわち、「寝殿造り」の出現である。
寝殿造りの「総床」を「ゆか」と呼ぶようになった。「ゆか」とは「斎所(いか)」、つまり清浄なところという意味である。
この「ゆか」は、始めは総板敷きの「とこ」の上に、一段高く造られた特殊な場を指して呼ばれていたようで、「とこ」とは区別されていた。
鎌倉時代入り、庶民の住まいも向上し、そこに設けられた「とこ」と貴族の住まいの 「ゆか」がほぼ同じ役目を果すようになり、「とこ」と「ゆか」が混同し、床の文字が 「とこ」とも「ゆか」とも読まれる結果となった。
文明はもろいものであり、伝承されなければいつもスタートラインからの出発となり、
伝統は変革し続けることが伝統となる。日本建築は幾人ものご先祖様の伝承であり、伝統を受け継ぎ変革させていくことが私達の役目と考えます。
Posted by 飯塚 静栄
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Posted by 木村 壽夫
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